ハンバーグを注文したのにギョーザが運ばれてきた。コーラを頼んだらアイスコーヒーが出てきた一そんなレストランがあったらどうだろう
「注文をまちがえる料理店」。一昨年以降、期日限定で”認知症の人が接客する店”として開店し、話題になった。実際、6割以上のテーブルで間違いがあったという。店先には認知症の人が働く旨を掲示してるため、来店した客も間違いを温かく受け入れるそうだ。客の9割が「また是非来店したい」と答えている
同店を企画した小国士朗さんは「間違いを受け入れて、間違えることを一緒に楽しむ。そんな、ほんのちょっとずつの”寛容さ”を社会の側が持つことができたら」と出店の動機を語っている(『注文をまちがえる料理店』あさ出版)
この店は、いわば”歩み寄りの場”といえよう。間違いを恐れて周囲の輪から離れる認知症の人と、認知症の人への接し方に戸惑う人。だが心を開いて歩み寄れば、互いの間に温かな感情が生まれる。人間の不思議さである
完璧な人などいないし、間違えたくて間違える人もいない。生活のさまざまな場面で、境遇の異なる相手を理解する寛容さ、温かく見守るゆとりをもつ。そうした心を身の回りから広げれば、社会は少しずつ変わっていく。(聖教新聞名字の言)